第84章 オレの好きなひと。《ラビED》
「じゃあなっ南!今日はあんまし残業すんなよ、早く寝ろよっ」
「はいはい。またね」
「単純じゃの…」
「うっせ」
ぶんぶんと片手を大きく振るラビと、そのラビに呆れ顔のブックマンに見送られて、談話室を後にする。
背後でまた喧嘩腰に言い合いしている気配が遠ざかるのを感じながら、ほっと静かに胸を撫で下ろした。
よかった、上手く誘えて。
「…折角取った休みだしね…」
二人に聞こえない程度に小声で呟く。
明日は偶々非番だった、なんてことはない。
コムイ室長に頼んで、日程をずらして貰った貴重な休みだ。
何故か、なんて理由は一つ。
ラビと非番を合わせる為。
前回もそうだった。
ラビが意図的に合わせてくれたから、一緒に街へと出掛けることができた。
それくらいしないと中々重ならないから、ラビの次の休みを把握して、意図的に私が合わせただけだ。
何故か、なんて理由は簡単。
私が、ラビの為に何かしたかったから。
本当に最近は激務で疲れているようだったし。
少しでも気晴らしになればいいと思う。
…そして、私の充電の為にも。
特別な行為なんていらない。
ただ傍にいて、あの屈託ない笑顔を向けてくれているだけで、仕事の疲れも吹き飛んでしまう。
そんな魅力がラビにはある。
それは恐らく、彼の性格が明るく人懐っこいものだからじゃない。
それはきっと、彼が私にとって特別なひとだからだ。
特別な、
私の心を、浚ったひと。