第84章 オレの好きなひと。《ラビED》
「南、ジジイは止めとけさ。南よりぜってー先におっ死ぬ命だぞ。未亡人になっちまう。あ、でも未亡人ならオレ好みさな」
「何言ってんの」
「阿呆じゃな」
そう言えばラビって昔、上は40歳から下は10歳まで範囲内だって言ってたっけ…。
だからコムイ室長の薬で10歳以下まで体が縮んでしまった時は、範囲外って対応されたんだろうけど。
…あの時は、なんだかもやもやしたっけ。
「馬鹿弟子め、これ以上阿呆なことで仕事の邪魔をするでない」
「へーへー。わかってんよ。南、あんまし無理するなよ?」
「うん。でも明日は休みだから」
「じゃあ非番重なるな。珍しいさ」
「だね」
ここのところ、本当に忙しくて全く重ならなかったお互いの休み。
偶に重なっても、当日顔をばったり合わせてから気付く、なんてことも多かった。
こうして前日に把握するのは稀なこと。
…ラビは、だけど。
「そういえばラビ、明日は体空いてたりする?」
「へ?」
「ほら、前に言ったでしょ。今度非番重なったら、今度は私がラビに何か奢るって」
「…よく憶えてたな、それ」
まじまじと隻眼が見つめてくる。
ラビの言う通りだと思う。
色々あったから、もう随分と前のことに思える。
ラビに誘われて、共に休日が重なった日に彼が計画した癒しプランを街で堪能させてもらった。
…違う、休日が重なったんじゃない。
ラビが意図的に合わせてくれたんだ。
私の疲れを取ろうって、善意の為に。
そこに私への好意も入ってたかもしれないけれど、確かにあれはラビの善意の表れだった。
だから、お礼をしたいと思った。
教団に戻る帰り道で、次に非番が重なった時はお礼に何か奢るよと約束した。
「だから今度は私がプラン立てるよ。日頃任務を頑張ってるラビが、癒されるプラン」
「…本当さ?それ」
「うん。駄目?」
「まさかっ駄目じゃねぇさ、寧ろ大歓迎!」
「ふふ。じゃあ約束ね。明日、11時に出入口の門前で」
小指を差し出せば、絡むラビの小指。
無言だったけど、何度も頷く様はやっぱり後ろで尻尾を振ってるわんこみたいだった。
可愛いなぁ。