第84章 オレの好きなひと。《ラビED》
「ブックマンも、おかえり」
「うむ」
「今回の任務はAKUMA討伐だったんでしょ?大丈夫だった?」
「情報より実際は小規模なもんじゃったからのう」
「オレ一人で充分だったさ」
「儂がおったから片付けられたんじゃ」
「だから何寝惚け」
「あーはいはい。二人のお陰ってことだね。うん」
また勃発し兼ねない二人の喧嘩を、最後まで見届けることなく遮る。
喧嘩を見る為に足を止めた訳じゃないからね。
「でもなぁ南、」
「ラビもブックマンも無事だったんだから、私にはそれが何よりだよ。だからラビも喜んで」
「…ちぇ」
不服そうな顔はしていたけど、言うことを聞いてくれるラビの姿勢に笑顔が浮かぶ。
そういう柔軟性は、きっとアレンや神田達より高いよね、ラビって。
「でも二日後にはまた任務さ」
「またAKUMA討伐?」
「そ。今度はユウが一緒だから、ちゃちゃっと片付けてくれそーだけど…その分、あの仏頂面と始終顔合わせてなけりゃなんねーと思うと若干の疲れが」
「あはは…確かに」
笑顔もつい苦笑いに変わってしまう。
ラビの気持ちはちょっぴりわかるから。
「でも本当に任務漬けだね」
「科学班の残業漬けに比べりゃまだ軽い方だけどな」
「何処も人手不足じゃからのう。南嬢もあまり無理するでないぞ」
「うん。ありがとうブックマン」
「は?なんさジジイその呼び名。何いつの間に南と打ち解けてんの?」
「ブックマンとは一時被害を共有した仲だからね」
「お前にはわからん仲だ」
数週間前のゾンビ化事件で、ブックマンと私は共に同じ薬を被って共に同じ被害に合った。
髪の毛の一部がウサ耳化するっていう、目的も理解に苦しむ変な薬だったけど。
あの時味わった精神的なものは、私とブックマンにしかわからないものだ。
交互に私とブックマンを見ながら驚くラビに、またも笑いが漏れる。
そういう些細な変化に気付くところも、観察眼の高いラビらしい。