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科学班の恋【D.Gray-man】

第83章 私の好きなひと。《リーバーED》



顔を隠すように俯いたまま、目の前の体を押し返す。
なのに顔は目の前の胸に埋まってしまった。



「は、班長っ?」

「今更だろ。お前の寝起きも寝落ちもよく見てる。ついでに酒で泥酔するところだってな」

「う。」



すぐ傍で笑う声。
班長の大きな腕が私の体を捕えていた。
腰に回された腕と、後頭部を引き寄せる手で、密着する体。
今まで何度か班長の胸の中に収まったことはあったけど、こんなふうに抱きしめられたのは初めてだった。

なんていうか…ぎゅっと。
それはもうぎゅうっと。
そんな効果音が付きそうなくらい。

高身長な班長に覆い被さるように抱きしめられて、体が仰け反る。
反射的に伸びた手は班長の広い背中に回っていた。



「俺には充分だ。今の南で。…今のお前がいい」



噛み締めるような声で呟く班長からは、どうにも解放させてもらえそうになくて。
…解放してもらう気もないから。
目の前の胸に顔を埋めて瞳を閉じた。

インクと化学薬品の匂い。
皺が寄ったシャツ。
くたびれた白衣。

ラビに抱きしめられた時に感じた、明るい陽だまりのような匂いとは程遠い。
だけど色んなものを背負った哀愁混じるこの身体からは、とても人らしい匂いがする。

それは目の奥を熱くする程に嬉しくて、胸の奥を締め付ける程に切なくて。



「私も、今のままの班長が、好きです」



心の奥を湧き立たせる程に、愛おしい。



「あー……南、」

「? はい」

「その、"班長"って呼び方なんだが…」

「?」

「二人きりの時は、止めないか?職場での立場を思い出しちまう」



緩む班長の腕の中で見上げれば、眉尻を下げて苦笑してくる顔が見える。
そ、そっか…そう、だよね…。



「じゃあ…」



こほん、と今度は私が咳払い。



「…リーバーさん」



まだ少し違和感の残る呼び名に、じんわりと胸が温かくなる。
班長───リーバーさんと、確かに重なった歩幅を実感して。



「ああ」



応えてくれたのは、子供のような無邪気な笑顔だった。









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