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科学班の恋【D.Gray-man】

第83章 私の好きなひと。《リーバーED》



「班長の心は…大丈夫なんですか?大切なひとを亡くして穴を空けた心が、あったはずです。あの…ダグ君の…世界で触れた出来事は、全部、現実にあったことだから」



班長も憶えているはず。
その証拠に、ダグ君の名前を出せば目の色が変わった。

私の知らない時間の中で、沢山のものを背負っては失ってきた。
その度に、今のように顔を上げて前を向いて、足を踏み出してきた。
そういう道を、リーバー班長は何度も歩いてきたんだ。
何度も、自分自身の力で。

いつも自分のことより、周りのことを気にかけて。
いつも誰かに頼るより、周りの人を支え続けて。

普通の人でありながら自分を悲観はせず、特別な人達の中で肩を並べて立っている。
そんな班長は、真似ようと思っても到底無理な程に強くて、大人で。
そして、その下で優しい涙を沢山流してきた人だ。



「私は……私が、リーバー班長の心に寄り添ってもいいんでしょうか…私で、埋められるんでしょうか…」



リーバー班長の心を通じて感じたあの女性は、誰よりも逞しく綺麗な想いを持った、愛情に満ち溢れていた女性だった。
私が、あの女性(ひと)の代わりになんてなれるのかな…。



「それは違うぞ」



はっきりと否定の意を示した班長の声が響く。



「あいつの代わりは誰にもできない。南の代わりが誰にもできないようにな。南の両親や、友人もそうだろ?皆の代わりはいないから、ずっと呼び続けていたんだろ」

「…ぁ…」



〝ひぃちゃん〟〝こーくん〟〝あおちゃん〟

幼い頃に、何度も何度も呼び続けた。
失ってしまった、友と呼んだ子供達。

…憶えていて、くれた。
私だけじゃなかった。
班長にも、私の剥き出しの心は伝わっていたんだ。



「憶えてて、くれたんですか」



非力で幼稚な私自身を見られたことに、不思議と後ろめたさも恥ずかしさもなかった。
この人なら、どんな私でも受け止めてくれるような気がして。



「ああ。俺は南のことを何も知らないんだと思い知らされた」

「それは私が…」

「南が話さなかったこともある。けど、俺も聞かなかったから」

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