第83章 私の好きなひと。《リーバーED》
何を、言われたんだろう。
理解はしているのに、一瞬思考が止まった。
真っ直ぐに見つめてくる朝焼けみたいな綺麗な瞳から、目が逸らせなくて。
勢い余って思いの丈を吐き出したような、あのリーバー班長の部屋で聞いた告白とは違う。
ちゃんと言ってること全部、覚悟してる眼だ。
「だから、ラビのところに行くな。ゴーレムは明日渡せばいいだろ」
握られている腕が熱い。
有無言わさない強い力なんかじゃないけど、振り払えない。
こんなふうに引き止められたのは初めてだった。
こんなふうに、理由も意味も…と、いうか。
これって。
この意味って。
「っ」
心臓が、煩く騒ぎ出す。
班長が言わんとしていることは、聞かなくてもわかってる。
返事が欲しいと言われた問いは、班長の部屋での出来事しかない。
「………」
私が出す答えも、悩む必要なんてない。
なのに───
口が、開かない。
私の心の整理を待ってくれた班長だけど…班長自身は?
班長の心の整理は、できてるの?
タップやマービンさん達だけじゃない。
ぼやけた輪郭のような、夢のような、そんな意識の中で見た───リーバー班長の過去。
私のような非力な人間じゃなくて、エクソシストとして戦っていた女性。
リナリーやミランダさん達に向ける仲間意識とは違う、特別な思いを向けていた女性。
あの女性(ひと)はきっと、リーバー班長の心に在り続けているひと。
「………班長は、どうなんですか…?」
あの剥き出しの心で触れた、リーバー班長の傷みを思うと足が止まる。
そうやって私や周りの仲間達を気遣って労って支えてくれるこの人が、きっと何より傷付いてきた人だから。