第83章 私の好きなひと。《リーバーED》
大体、俺にそれを止める権利はあるのか。
明確なものは何もないのに、勝手な憶測で意見することなんて。
「リーバー班長、これっサイン貰っていいですか?」
弾む足取りで南が駆け寄ってくる。
目の前に差し出されたのは、ゴーレムの使用許可書。
「…ああ」
書類を受け取る。
だが足が動かない。
…仕事と私情を混合したら駄目だ。
南は仕事をしているだけだろ。
「班長?」
デスクの引き出しから印鑑を出して、書類に押すだけだ。
なんてことはない業務の一つ。
そんな些細なことなのに、なんで───
「あの、何か記載に間違いでも…」
「……な」
「え?」
なんで、なんて問いかけるまでもない。
「行くな」
立場とか面子とか口実とか名目とか。
目の前に当然のように存在する壁を全部振り払った時に、残るものはひとつだけ。
「ラビのところに、行くな」
南への想いだけだ。