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科学班の恋【D.Gray-man】

第83章 私の好きなひと。《リーバーED》



「そうか。南がそうしたいなら、好きにするといい」



ほっとする。
マービンの名前を聞いただけで、表情を曇らせていた南を知っていたから。



「…ちゃんと笑えてるな」



あの頃のお前じゃ、ないんだな。

安堵の溜息と共につられて笑みを浮かべれば、南はまたひとつ笑った。
さっきの笑顔とは違う、少し照れ臭そうな笑顔。
はにかむその表情に、何故か胸の奥がほんのり騒ぐ。



『ピプピッ!』

「わっ!?」

「なんだ?」



その空気を突如壊したのは、資料の海から飛び出してきた一匹のゴーレムだった。
雪崩の際にスイッチでも入ったのか、ぴょんぴょんと飛び跳ねているゴーレムはどこか見覚えがある。
オレンジ色のグラデーションが混じった、ドロップ型のゴーレム。

あれは───



「あ!待てッ」



慌てて立ち上がった南が、高く飛び跳ねるゴーレムを取っ捕まえる。



「はー、危ない…」

「南、そのゴーレムは…」

「これですか?ラビの新しいゴーレムです。いつまでも私の旧式を使わせる訳にはいかないと思って」



やっぱり、そうか。
この間のゴーレム解析処理で、ラビにやった自身のゴーレムを難しい顔して見てたからな。

…あの時、ラビに意味深なことを告げられながらも研究室に戻った俺は、結局南に持っていたゴーレムを渡しただけ。
南も俺が書庫室の近くにいたことは気付いていなかったから、何も言わなかったし聞かなかった。

南とラビが二人きりでいた書庫室での時間。
仕事のやりとりをするだけにしては、長い時間だった。
…あれは、科学班の連中が騒いでいた、本当に逢瀬みたいなもんなのか。
一瞬そんな嫌な予感が走ったが、南が仕事中にそんなことをする訳ないとすぐに予感は取っ払った。

馬鹿馬鹿しい予感だ。
だけど、完全に否定もできない。

俺は南とラビの今の間柄を、はっきりとは知らない。

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