第3章 私の休日。
「リナリーでもダシに使ったのかな…」
今日はラビと約束した休日。
ラビがどうやって非番を合わせたのか考えながら、鏡の中の自分を見る。
昨日は頑張って仕事を徹夜にはしなかったものの…日付が変わっても起きてたからか、鏡に映る自分の顔はやっぱり疲れていた。
というかいつもこんな顔なんだ…酷いなぁ…。
疲労困憊した時のリーバー班長には負けるけど、それでも目の下にあるのは立派な隈。
そこに手を当てて、ふるふると首を横に降る。
こんな顔じゃ駄目だ。
折角ラビが非番を取ってくれたんだし、彼の要望に応えてあげよう。
"折角なんだから、お洒落して来いよ"
ラビのその言葉を思い出しながら、化粧ポーチに手を伸ばす。
下地とファンデとコンシーラーで、まずは顔のベースを薄く作る。
すると忽ちあんなに目立っていた隈は消えた。
うん、化粧って偉大だ。
今は春先だから優しい色合いのシャドウを目元に入れて、リキッドやマスカラも優しいブラウンに変える。
眉毛を整えて、淡いチークを乗せて、唇にピンクベージュの優しい色したグロスを塗れば…よし、完成。
「……ケバ」
久しぶりにきちんと化粧したからか、ナチュラルメイクでもケバく見えた。
思わず鏡の中の自分を凝視する。
だ、大丈夫だよね…そんなにケバくないよね…?
選んだ服装はいつものパンツスタイルじゃなく、ふんわりと柔らかい曲線を描く大人しいワンピース。
いつもは黒いパンプスや靴だけど、今日はお洒落な明るいパンプスにしてみた。
そしていつもは邪魔だから後ろでまとめて縛っていた髪を下ろす。
あ、髪伸びたなぁ…今度切ろう。
「うん。これでいい、かな…?」
久しぶり過ぎて、良いか悪いかもわからなかったけど。
いつもと違う自分は少しだけ別人に見えた。
どれだけいつもの姿に慣れてしまってるのかって話よね。
「やばっ」
ふと腕時計に目を落とせば、もう待ち合わせの時間間近。
慌てて鞄を手に部屋を出る。
ラビとは教団の出入口近くで待ち合わせしてる。
ああ見えて時間はきっちり守る子だしね。
早く行かないと。
そう自分を急かしながら、バタバタと忙しなく待ち合わせの場所に向かって駆け出した。