第83章 私の好きなひと。《リーバーED》
───
──────
─────────
「それで、新しい研究室だと此処にスペースができますから、もう少し保管庫増やした方がいいですかね?」
「………」
「リーバー班長?」
「あ?…ああ、保管庫か。そうだな、今でも充分きついしな…もう少し広げておくか。棚の個数増やしておいてくれ」
「了解」
頭の隅で拾ったロブの単語を繋ぎ合わせて、目の前の光景と合わせて返事をする。
どうやら返答は適切だったらしい、見取り図を丸めて頷くロブに、内心胸を撫で下ろした。
…何やってんだ俺。
今は仕事中だぞ。
というかこんなこと、前にもなかったか。
「デジャヴだな…」
ラビの一言に内心振り回されて、上の空になるなんて。
これじゃああの時と一緒だ。
初めてラビの南へ向けた想いの鱗片を、知った時と。
あれから大分月日は流れて南やラビとも色々あった。
なのに微塵も成長が見られない自分に、深い溜息が漏れる。
本当、何やってんだ俺。
仕事に集中しろ。
「…これ全部片すか」
途中で止めるはずだった目の前の作業を、今夜中に終える決意をする。
デスクの上にも足元にも転がっているのは、荷物を整理する為の段ボール箱。
いつもの仕事を終えた後、いつまでも終わらない引っ越し作業のまとめをしていた。
科学班の所為で引っ越しができないと文句言われそうだしな、いい加減終わらせないと。
時刻は20時手前。
今からこれを全部こなすとなれば下手すれば日付も越える。
それでも今の俺には丁度良い作業だ。
目の前のことに集中すれば、余計なことを考える暇もない。
……別に、余計なことじゃねぇけど。