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科学班の恋【D.Gray-man】

第83章 私の好きなひと。《リーバーED》



こういうことって、どう伝えたらいいのか。
何も考えていなかったけど、不思議と躊躇はなかった。



「前に…伝えてきてくれたよね。ラビの、私への気持ち。…私、待っててって、言ったよね。答え出すからって」



ただラビとの間に生まれたぎこちない関係を、元に戻したくて。
そうして向き合った彼は、はっきりと自身の想いを告げてくれた。



「その答えが出たから…聞いて、欲しくて」



返事はなかった。
でも静かに沈黙を作るラビの表情が、先を促してくれていた。

すぅ、と一呼吸。
白衣の裾を握り込んで、決する。



「ごめんなさい」



シンとした書庫室に私の声だけが響く。
下げた頭に、ラビの表情は見えない。



「ラビの気持ち、凄く嬉しかった。ラビのお陰で、救われたことも沢山あった。私にとって、ラビは今でもヒーローだよ」



でも。



「だけど、私のこの想いは…この想いを向けたい人は、昔からずっと変わらないの」



色褪せることはない。
ずっとずっと、振り向いて欲しくて追っていたあの背中。
憧れから好意へと変わったのは、いつだったのか。
はっきりとした瞬間は憶えていないけれど、それは確かに"恋心"だった。



「私の好きなひとは───」

「知ってる」



重なる声。



「ずっと見てきたから。南が誰を見ていたか、それくらい知ってるさ」



でもそれは冷たいものじゃなかった。
下げていた頭を上げれば、いつものようにくしゃりと笑うラビの顔が見えた。

くしゃりと、屈託なく。
でも、淋しげな瞳で。



「だから、わかってた。南の答えも。それでもちゃんと出すって言ってくれたから、だからオレも待とうと思った。…南のそういうところ、本当馬鹿みたく真っ直ぐだよなぁ」



へらりと緩い顔で笑うラビに、胸の奥が詰まる。

…わかってた。
いつも肝心なことは誤魔化すラビが、誤魔化さずに伝えてくれた想いだから。
それだけ、真剣な想いを抱いてくれてたってこと。
それを拒否すれば、どんな顔をさせてしまうのか。
わかってたから。
覚悟、してたから。

…だから、罪悪感なんて、向けちゃ駄目。

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