第83章 私の好きなひと。《リーバーED》
「まぁ、ぼちぼち、ね。引越し作業も同時進行してるから、中々進まないというか…」
「また手伝いに行こうか」
「ありがとう。でも大丈夫。ラビ達のお陰で大半の荷造りはできたし。後は私物とかだけだから」
「じゃあそっちの手伝いしてもいいけど。どうせ南のことだから、自室も全然手ぇ付けてないんだろ?」
「…なんでわかるの」
「そんくらいわかるさ。南のことだし」
さらりとなんでもないことのように言うラビの言葉に、微かに胸が騒ぐ。
なんでもないことのような台詞だけど、なんでもないことではないことを、私はもう知っている。
…ラビの想いを、きちんとその口で伝えて貰ったから。
「オレの部屋は、ジジイが整理するから触るなって言われてるし。だから暇なんさ」
ぱたんと膝の上の文献を閉じて、腰を上げる。
一気に視線の位置が変わる。
少し首が傾いて上がる、高い位置。
リーバー班長と同じ身長。
だけど、リーバー班長とは違う人。
…そこへ向ける私の思いも、違う。
「いいよ。自分の部屋は自分で片付ける」
「そ?」
「うん」
ラビがきちんと伝えてくれたように。
私もきちんと伝えないと。
そう、ずっと思い悩んでいた答えは、班長への想いが固まると同時に決心できた。
「じゃーこの記録が終わったら、そっち遊びに行っていいさ?ついでに解析処理終わったゴーレムも貰えるし」
「…ラビ」
「ん?」
「あのね…話したいことが、あるの」
初めてラビと共に赴いたイノセンス調査の任務。
其処で伝えた時と、同じ言葉を投げ掛けた。
どんなに普段お馬鹿なことをして周りに弄られるキャラになっていても、ラビの頭の回転とキレの良さは知っている。
私の表情と声のトーンで、それが気軽な世間話ではないことに気付いたんだろう。
「…なんさ?」
ほんの少し、ラビの表情が変わった。