第83章 私の好きなひと。《リーバーED》
「じゃあなんで…何処かで逃げ出したのかな…」
一応、生物と同じように動くゴーレム達だから。
「ちゃんと探したんさー?」
「さ、探したよっラビのゴーレムでしょ?あの橙と黒混じりの、こういう形のっ」
両手の人差し指で、雫の形を空中に描き出す。
エクソシスト一人一人に与えられたゴーレムは、それぞれ視認できるように、ほんの少し形や色を変えてある。
ラビのそれも、同じ形のゴーレムは二つとない。
雫形ゴーレムは、ラビ専用だ。
「何言ってんさ、南。オレのゴーレムは違ぇさ」
「え?」
なのに自信満々に伝えた事柄は、あっさりとラビに呆れ顔で否定された。
「オレのそのゴーレムはユウの手で真っ二つにされたから、南のゴーレムを貰っただろ」
「あっ」
「忘れんなよなぁ」
なんですっかり忘れてしまっていたのか。
言われてはっとする。
そうだ、ラビのゴーレムは神田との鍛錬中に壊れたんだっけ。
新しいのを作ろうとすれば、代替えの私のゴーレムでいいってラビが自分のものにしてしまったんだ。
私のゴーレムは緊急用の大した機能は備えていないもの。
見た目も神田のゴーレムと大して変わらない、ノーマル型。
「あちゃ…だから見落としたんだ…」
「しっかりしろよ」
「あ〜…ごめん。うっかりしてた」
思わずぺちりと自分の額を手で叩く。
「…仕事、忙しいんさ?」
自分の失態にがくりと肩を落としていたら、不意にラビに問い掛けられた。
額からずらした手の横から覗いたのは、窓際に腰を下ろしたまま見上げてくるラビの顔。
高身長でいつも見上げることが多かった彼にしては、珍しいアングル。
「ゴーレム関連で南がヘマするなんて珍しいじゃんか」
それは言わないで、恥ずかしいから。
…と思ったけど、心配してくれているラビの面持ちに、なんとなくそんな返しはできなかった。