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科学班の恋【D.Gray-man】

第82章 誰が為に鐘は鳴る



「じゃあコムイのシスコン愛に近い感じ?」

「ああ、そうかもな」

「ふーん……ならいいけど」

「?」



認めるリーバーにあっさりと身を退くラビ。
先程まで納得のいかない表情をしていたはずなのに、それはもう影を潜めていた。



「だってそれなら家族愛だもんな。オレのはそれとは違うから、都合がいいさ」



軽い足取りで机の縁からすたりと下りると、ラビは笑った。
いつもの人懐っこい親しみある笑顔ではなく、どことなく挑戦的な笑み。
幾度となくリーバーが見掛けてきた、彼も男であると思わせる表情だ。



「確かに、家族愛に近いかもな。俺以外の奴らは」



しかし臆することなく、リーバーもまた緩やかな笑みを称えた。



「…オレが先に見つけたんだけど?」

「手に入れた者勝ちだろ」



幾度も交わされたその言葉は、最早合言葉のようなものだ。
逸らすことなく受け止めるリーバーの瞳に、先に目を逸らしたのはラビだった。
仕方ない、とばかり肩を竦めて。



「まー確かに。…一時期ははんちょに譲ってやってもいいかなぁ、とか思ったりもしたけど」

「! そ、そうなのか?」

「一瞬な。ほんの一瞬」



科学班の中心で赤らめている彼女の表情は、果たして誰が作らせたものなのか。
それも気に掛かったが、何より確かなのは自身の想い。



「でもさ、今回のことで改めてわかったんさ」

「何を?」

「…やっぱ、失うのは無理だなって」



この世からその命の灯火を消してしまうことも。
この手でその肌に好意を持って触れることができなくなることも。

皆まで言わず隻眼の瞳を真っ直ぐただ一人だけに向けるラビに、リーバーもその心を理解した。
聞かなくてもよくわかった。
幼い南の幼少期の姿を前に、他成らぬラビと同じ想いを抱いたのだから。

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