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科学班の恋【D.Gray-man】

第82章 誰が為に鐘は鳴る



が、しかし。



「お、おいっ?冗談だろっ?」

「いやいやいやないないない」

「南よォ!黙ってんなよ!?いつもみたく貶せよオイ!」



まさにからかっていた乙女のような反応に、彼らの意地の悪い笑みが持続することはなかった。
寧ろ顔を青くさせて狼狽える始末。



「ま、まさか…本当に片想いの相手ができたって訳じゃあ…」

「まさかだろ。俺は認めねぇ」

「そんな奴いるなら此処に突き出せ。今すぐ」

「な…何、言ってんの皆…別に私はそんな相手いるって言」

「言ってんじゃねぇかその顔が!」

「認めねぇ!俺は断じて認めねぇからなぁあ!」

「何処の馬の骨ともわからねぇ野郎に南をやれるか!」



赤い顔でぎこちなく首を横に振る南は、言葉より態度が物を言う状態。
そんな南に眉尻をつり上げる科学班一同に、アレンでさえも目を丸くした。






「…あんさ。オレ前から思ってたんだけど、」

「なんだ?」






そんな彼らの騒がしいやり取りに、唯一呆れ顔で傍観する者が二名。



「科学班のアイドルはリナリーだって皆口揃えて言ってんけどさ…本当はそれ、南だろ?」



ほれ、と顎で彼らを指し示しながら肩を下げるのは、机の隅に腰掛けたラビ。



「さぁな。でもあれはアイドルって扱いじゃないだろ」



それに応えるのは、組み立てた段ボール箱にガムテープを貼り付けているリーバー。



「扱いにも色んな方法があんだろ(あれは見方を変えればリナリーを溺愛するコムイとそう変わんねぇさ)」



それでも納得しない顔でラビは遠目の彼らを見守った。

科学班の中で何かと異性扱いされることなく、彼らの雑な扱いも甘んじて受け応えてきた南。
その姿はラビを不安にさせることは幾度となくあった。
意中の相手が異性扱いされないことに多少の安心感を持ちながら、同時に不安感も抱かせる。
何故不安など感じていたのか、原因はこれだったのだとようやく理解した。

どんなに雑に扱おうとも、そこには彼らなりの愛情がある。
それが見え隠れしていたからこその不安だ。

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