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科学班の恋【D.Gray-man】

第82章 誰が為に鐘は鳴る



「ゆ、夢じゃなかったの?」

「はい?」

「何言ってんの?南」

「あれ、夢じゃなかったのっ?ジョニーが生肉噛ってたのも、アレンがティムに牙剥いてたのも…!」

「うへ…それは忘れて、南。オレここ数年で一番忘れたい出来事だから」

「僕も激しく同感です…」

「だ、だって…!」

「夢であるはずがないだろう」



顔を青くするジョニーとアレンに南が詰め寄れば、ふと頭上に影が掛かった。
見上げれば、照明に照らされた眩しい金髪が映り込む。



「あれが夢などであって堪るか」

「…バク、支部長…?」



腕組みをしたまま鋭い切れ目で見下ろしていたのは、アジア支部支部長であるバク・チャン。
ぱちりと目を瞬く南を見下ろして、やれやれと溜息をつく。



「君はあの時、落下物の衝撃で気を失ってしまったんだ。ウォーカーが咄嗟に助けたから酷い怪我は負わなかったがな」

「え…え?あの時、気を失った…?」

「南さん、本当に憶えてないんですか?僕が南さんの作ったワクチンで元に戻った時、机の雪崩から僕を守ろうとしてくれたこと」

「お…憶え、てるよ。だから、怪我してないかって…っ」

「南〜、それもう三日前のことだからね?神田の言う通り、ゾンビの夢でも見てたんじゃない?」

「三日、前?」



あの時共にゾンビの恐怖を経験したバクが言うなら真実なのだろう。
しかしそれが三日前の出来事だと言うジョニーに、南は驚きを隠せなかった。
思わず頭を抱えて思考をフル回転させる。



「あの後、正気に戻ったウォーカーと神田に手伝って貰って、ゾンビ化した団員達へのワクチン投与を行ったのだ。僕は君が作ったワクチンの増量の手伝いをした」

「暫くして南さんも意識を取り戻したけど、怪我と疲労が酷くて高熱を出してしまったんですよ。婦長さんが言うには、ずっと張ってた危機感の糸が切れたんだろうって」

「そりゃそうだよ。そんなに重傷者なのに、何日も一人でゾンビウイルスと戦ってたんだし」

「重症、者?」

「自分の体見てみなって」

「え…?(体?)」

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