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科学班の恋【D.Gray-man】

第82章 誰が為に鐘は鳴る



「でもなんで…幼児化の薬はまだ切れないはずなのに…」



そもそもアレンと同じにワクチンの投与もした。
完全に正気に戻すことはできないが、それであの鬼のような神田も多少は大人しくなるはずだというのに、何故か。
驚きを隠せないでいる南の隣で、バクは堪らず後退った。



「現に効果が切れているから、神田もああなっているのだろう…っ!?に、逃げるぞ椎名!ラボには戻れん!」

「っ駄目です!ラボにはワクチンが…!」

「それは…だが致し方ない!」

「致し方なくない!」



痛む首を押さえながらも濁った声を荒げる南に、一瞬バクも気圧された。



「リーバー班長とラビが決死の思いで採ってきてくれた血液なのに…!ここで放り投げればその努力が全て水の泡になります!」

「し、しかしだな…ッ」

「バク支部長は逃げて。ティム、支部長を安全な所まで案内!」

「!? 君はどうするんだッ!」

「私はあのワクチンを持って逃げます。ウイルス感染はしないから大丈夫っ」

「待て椎名!」



バクの制止を聞かずに飛び出す。
ギリギリまで見開いた神田の鋭い眼孔が、それを見逃すはずもなかった。
ぐ、と脚に力を込めたように見られたのは一瞬。



「!?」



ふと目の前の視界が暗くなる。
ぎくりと体を硬直させる南の目の前に、神田の姿は在った。



(速い…!反応速度が他のゾンビの比じゃない…!)



ゾンビ化すれば、知識と共に行動力も多少は落ちる。
単純な思考と共に単純な動きしかしなくなる為、一般人であれば力を増すがエクソシストや元帥となれば逆に力は劣る。
しかし目の前の神田は、エクソシストとして戦闘に赴く彼そのもののようだった。



「痛…ッ!」

「グルル…!」



肩を掴まれたかと思えば、強い力で無理矢理に床に捻じ伏せられる。
半ば馬乗りのように跨ってくる神田を前に、南は成す術もなかった。

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