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科学班の恋【D.Gray-man】

第82章 誰が為に鐘は鳴る



「っ…だから時間がないんです。いつまでも瓦礫の向こうに、皆を追い出していられない。ワクチンを作り上げないと」

「そのことなんだが、椎名」

「? なんですか」

「ワクチン作りなら僕も手伝える。強力させてくれないか?」

「………はい?」

「この僕が直々に協力してやろうと言っているんだ。科学者だからな」

「……誰が?」

「僕以外に誰がいる」

「…支部長が?」

「………なんだその鳩が豆鉄砲喰らったような顔は」

「いや…しぶちょ、もう一回」

「だから、僕は科学者だと言っているだろうっワクチンを作るくらい訳はない!コムイとだって肩を並べ…いや!あいつより腕前は上なのだぞ!」

「…こんな時に冗談言っても面白くな」

「冗談ではないわぁああ!」



いつまで経ってもまるで信用しない南に、ついに地団駄を踏む勢いでバクが憤怒した。
皮膚には、瞬く間にぷつぷつと赤い斑点が浮かび上がる。
それは極度に興奮した時に表れる、彼の特性のような症状、蕁麻疹である。
そこまで感情が表立って出るところ、嘘ではないのだろう。
ぽかんとバクを見ていた南の顔がぎょっとした。



「支部長!」

「な、なんだ」



がしりとその手首を掴み、



「なんで早く言ってくれないんですか!?」



南もまた憤怒した。



「それならそうと、悠長に食料調達なんか行かなかったのに!」

「お、おい引っ張るな…!荷台は良いのか!?」

「何言ってるんですか!一にも二にもワクチンですよ!というかなんでそんな大事なこと黙ってたんですか!」

「黙ってなど…!君は僕をなんだと思っていたのだ!科学者であることくらい、科学班なら知っているだろう!?」

「はぁ…シスコン支部長という枠組みの方が印象強くて」

「っシスコンではないわぁああ!!!」



ぎゃあぎゃあと喚くバクを引き摺るようにして、腕を引き走る南は話半分にしか聞いていない。
頭上で旋回しながら後を追うティムキャンピーは、またもや小さな溜息のような動作を溢したのだった。

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