第22章 暗闇の中
「私はただの人間だから。体でラビ達を守ることはできないから…せめて心で、守りたいって思うんだよ」
頭を撫でていた手が離れる。
顔を上げれば、照れたようにはにかむ南がいた。
「臭い台詞だけど、これ本気。…あ、科学班の皆には内緒ね。絶対からかわれるから」
「…言わねぇよ」
元より、誰にも言うつもりはない。
そんなキザであったかい台詞、誰にも聞かせたくないから。
「…あんがと」
ぽつりと素直に礼を言えば、南は満足そうに笑った。
つられてオレの口元にも笑みが浮かぶ。
置かれてる状況はどっかの村の地下で、全く良いものではなかったけど…心は穏やかなものだった。
「…ん?」
そんな中、ふと手元の布を見た南が首を傾げる。
「なんさ?」
「これ…」
じぃっと布きれを見ていたかと思うと、ゴーレムの放つ光にそれを翳す。
確かそれ、辺りから掻き集めてた布きれの一つだよな。
よく見えるように地面に広げて、ゴーレムを手に立って見下ろす。
同じように南の隣に立てばその形がわかった。
所々破れていたけど、よく見れば花のような刺繍が入っていて、前開きのそれは服のようだった。
「資料で見たことある。多分これ、日本とか中国とかの民族衣装だよ」
「確か…キモノってやつ?」
「そう、それ」
袖口が広く、前合わせのそれは確かに南の言う通りだった。
「なんでこんな所に、着物なんか…」
仕事の表情に切り替えた南が、休憩スペースに使っていた布きれを片っ端から広げ始める。
どれもこれも煤汚れていたから、はっきりとしたことはわからなかったけど。
「これ、フランス国旗が縫い付けられてる」
「軍服かなんかだな。この装飾も、どっかの宗教のもんさ」
全部が全部そうじゃなかったけど、中にはデンケ村と関係のない他国の衣服や物も確かに混じっていた。