第22章 暗闇の中
オレとジジイにとって、教団は仮住まいなだけ。
ブックマンとしての役割。
"そのログでの裏歴史を知る"
黒の教団の場合、それはこの千年伯爵との"聖戦"だ。
その目的が達成されれば、またいつかは別のログに移るかもしれない。
それが全く知らない土地か、教団関連のものか…はたまたノアに関するものか、全くわからないけど。
今当たり前に隣に感じているこの存在も、いつかは消えてしまうのかもしれない。
いつかは───…今までの過去と同じ。
南もまた、オレにとって紙の上の情報と化してしまうのかも、しれない。
「…ラビ?」
近くで見上げてくる南の瞳。
ユウやリナリーと似た色なのに、吸い込まれそうなその色は全く違う色合いにも見える。
そこに映し出されたオレの顔は、なんとも言えない表情をしていた。
「なんか怖いんだけど、顔が」
思わず落ちそうになったオレの思考を遮ったのは、南のきっぱりとした声。
「またなんか一人で考え込んでるでしょ。顔、暖炉の煤だらけだよ」
「ぶっ。な、にするんさ…っ」
手首の服の裾を引っ掴んで、乱暴にごしごしと擦り付けられる。
「そういうむっずかしい顔してる時のラビってさ、一人で色々抱えて考え込んでること多い」
「…オレが?」
「そうです。軽口叩く癖に、大事なこと言わなかったりするでしょ」
溜息をついて、顔に押し付けられた裾を離される。
「時々一人でいることあるし。そういう時、大体そんな顔してる」
「…え…南…オレのストーカー?」
「……口にこれ突っ込もうか」
「ごめんなさいッ」
今度は地面に敷き詰めていた布を引っ掴む南に、慌てて頭を下げた。
「…とにかく。見てる人も此処にいるんだから。何かあるんなら、頼りなさいよ」
下げた頭に手が乗る。
その小さな手は、ぽふぽふと何度も頭を撫でてくる。
「エクソシストとか、ブックマンとか。そういうの抜きにして」
そしてさらりと放たれた言葉は、オレの心の奥底を突いた。
…嗚呼、なんで。
オレが欲しい言葉を、そう簡単に見つけちまうかな。