• テキストサイズ

科学班の恋【D.Gray-man】

第22章 暗闇の中



オレとジジイにとって、教団は仮住まいなだけ。
ブックマンとしての役割。

"そのログでの裏歴史を知る"

黒の教団の場合、それはこの千年伯爵との"聖戦"だ。
その目的が達成されれば、またいつかは別のログに移るかもしれない。
それが全く知らない土地か、教団関連のものか…はたまたノアに関するものか、全くわからないけど。
今当たり前に隣に感じているこの存在も、いつかは消えてしまうのかもしれない。

いつかは───…今までの過去と同じ。
南もまた、オレにとって紙の上の情報と化してしまうのかも、しれない。



「…ラビ?」



近くで見上げてくる南の瞳。
ユウやリナリーと似た色なのに、吸い込まれそうなその色は全く違う色合いにも見える。
そこに映し出されたオレの顔は、なんとも言えない表情をしていた。



「なんか怖いんだけど、顔が」



思わず落ちそうになったオレの思考を遮ったのは、南のきっぱりとした声。



「またなんか一人で考え込んでるでしょ。顔、暖炉の煤だらけだよ」

「ぶっ。な、にするんさ…っ」



手首の服の裾を引っ掴んで、乱暴にごしごしと擦り付けられる。



「そういうむっずかしい顔してる時のラビってさ、一人で色々抱えて考え込んでること多い」

「…オレが?」

「そうです。軽口叩く癖に、大事なこと言わなかったりするでしょ」



溜息をついて、顔に押し付けられた裾を離される。



「時々一人でいることあるし。そういう時、大体そんな顔してる」

「…え…南…オレのストーカー?」

「……口にこれ突っ込もうか」

「ごめんなさいッ」



今度は地面に敷き詰めていた布を引っ掴む南に、慌てて頭を下げた。



「…とにかく。見てる人も此処にいるんだから。何かあるんなら、頼りなさいよ」



下げた頭に手が乗る。
その小さな手は、ぽふぽふと何度も頭を撫でてくる。



「エクソシストとか、ブックマンとか。そういうの抜きにして」



そしてさらりと放たれた言葉は、オレの心の奥底を突いた。

…嗚呼、なんで。
オレが欲しい言葉を、そう簡単に見つけちまうかな。

/ 1387ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp