第22章 暗闇の中
「じゃ、科学班にもその技量の凄さを、身を持って実感してもらうために」
「はい?」
脱いだ団服の上着を南に羽織らせる。
「それ着てろよ。此処、割と寒いし」
「でも、それじゃラビが寒いんじゃ…」
「何度も言ってんだろ?オレは南より丈夫なんだって」
南が誰かを特別な目で見ていることは知ってる。
…それでもちゃんと答えを出すって言ってくれたから。
その間は…オレもちゃんと待とうと思った。
真正面からぶつかってきてくれた南のように、ちゃんと向き合おうって。
じゃねぇと男として格好悪いだろ。
キキッ
「ありが───…ひっ!?」
礼を言おうとした南の声が小さな悲鳴に変わる。
不意に暗闇から届く微かな鳴き声と足音。
目線を向ければ、小さな塊の影が一瞬だけ見えた。
鼠かなんかだな、あれ。
「なんさ、鼠だろ。ただの」
「あ、そう…鼠ね、鼠…」
ふと腕に違和感。
目線を落とせば、南の手がしっかりとオレの服を握ってる。
………。
「…怖ぇの?鼠が」
「……別に。鼠なんか怖くないよ」
問えば、そっぽを向く顔。
言いながらも、オレの服を離そうとはしない。
「散々、外ではオレらのことビビリって言ってた癖に。南も怖がりなんさなー」
「う…。そりゃあ、こんな薄気味悪い場所にいれば…ビビりもするでしょ。私別に、幽霊とか平気なタイプじゃないし…」
そういや、そんなこと言ってたっけ。
「任務中のエクソシストとファインダーの皆は、こんな思いしてたんだ…実体験と紙の上の情報とじゃ、大違いだよ…」
辺りを伺うように見渡しながら、南が重々しく息を吐く。
"紙の上の情報"
その言葉に、一瞬思考が止まる。