第22章 暗闇の中
瓦礫の山から目ぼしい物を集めて、簡易的な休憩スペースを作る。
「よく見れば、此処にも衣類とか沢山転がってる。…あの行方不明者達の物かな」
布を何枚も集めて、固い地面に敷き詰めながら南が呟いた。
恐らくそうだろうな。
「はー、にしても疲れた…南は足、平気さ?」
「うん、大丈夫」
ドサッとその場に尻を落として、背中の柱に寄り掛かる。
隣に座る南を見れば軽く笑って返された。
オレでも疲労がきてんのに、南は任務慣れなんてしていない普通の人間。
ずっと暗くて不安定な場所を歩き続けて、あんな遺体も見て、身体的にも精神的にも疲れてるはずなのに弱音一つ吐かない。
普通なら中々肝が据わってんなーって思うけど…すげぇよなって、ただただ感心した。
教団内部で、科学班としてエクソシストを気遣う姿はよく見てきた。
此処でも同じくオレ達の足手纏いにならないようにって、そう思ってんだろ。
すげぇよなって感じさせられたのは、オレとのことも同じで。
あんなはぐらかされたら、普通なら嫌悪感なんて抱いてもおかしくないのに。
南はオレのことを失いたくないって言った。
オレが逸らし続けていた視線を、真っ直ぐにぶつけてきて。
背を向けていたことに、真正面から向き合ってきた。
すげぇなって思う。
逃げることは凄く簡単で、向き合うことは凄く難しくて、それでも困難な道を選んだ南に。
やっぱりオレは南が好きなんだと実感させられた。
「ラビは足とか大丈夫なの。怪我してない?」
「オレは平気。科学班が作ってくれた団服が丈夫だからさ」
「あ。そのブーツのデザイン、私が考えたんだよ。ジョニーが改良してくれて、」
団服を褒めれば自分のことのように喜ぶ。
その零れた笑みは煤だらけで汚れていたけど、充分にオレの胸を満たしてくれた。
オレらを守る為に色々と尽くしてくれる存在を感じて、ならそんな南を守るのはやっぱりオレでありたい。
そう、改めて感じながら。