第21章 迷路
「何、どうしたの」
ラビが纏う雰囲気に不安が募る。
でも私が見る限り、その部屋には特に何も変わったことはない。
今まで通ってきた部屋と同じ。
剥き出しの岩の柱に、散らばった塵や瓦礫の山。
「どうしたの、ねぇ」
背中から前に回ってラビを見上げる。
はっきりと問いかければ、やっとその翡翠色の片目は私を映した。
「…同じなんさ」
「同じ?」
静かな声で呟いて、ラビが一つの柱に歩み寄る。
その手は柱を指差していた。
「柱の立ち位置も、通路の感覚も、全部同じ」
…うん?
それが何か問題あるのかな。
今まで通ってきた部屋は、全部似た作りをしていた。
確かに少し違った造りもあったけど───
「ここに付けた、目印も」
「…え?」
ラビが指差す柱のその場所に、小さな数字が一つ。
【6】と書かれたそれは、確かに真新しい削られた跡だった。
…まさか。
「此処は、オレ達が一度通った部屋なんさ」