第21章 迷路
ザク、ザク、
薄暗い通路に響く、二つの足音。
「もうこんな時間…」
微弱なゴーレムの光に腕時計を翳して、時間を確かめる。
すっかりアレン達と合流する時間は過ぎていた。
やっぱり電波障害が起きているのか、ゴーレムに連絡がきた気配はない。
「………」
ちらりと先を歩くラビを見る。
あの部屋を出てから、ラビの歩く速度は速くなった。
早く外に出る道を探してるんだろう。
AKUMAか、異常者か。
どちらにしろ早くアレン達に知らせないと。
ファインダーを襲ったのなら、アレン達が襲われる危険性もある。
「………」
腕に抱いたファインダーのマントに視線を落とす。
マントを半分も覆う夥しい血。
それはもう乾ききって、ぱさぱさと布にこびり付いていた。
殺して肉を剥ぎ取るなんて異常な行為、楽しむ為にやってるとしか思えない。
ぐっとマントを握る手に力が入る。
この人の為にも、犯人を明らかにしないと。
「ねぇ、ラ───…うぷっ」
そう決心して、顔を上げた瞬間。
目の前にラビの背中があって、止まる暇もなく衝突した。
「った…何、どうしたの」
軽くぶつけた鼻を擦りながら呼びかける。
返答はない。
「ラビ?」
今度ははっきりと名前を呼んで、彼が足を止めて見ているものを横から覗く。
「…嘘だろ」
ぽつりと、前を見たまま唖然と零れた言葉。
彼の目は、目の前の開けた部屋を見ているだけだった。