第21章 迷路
「わっかんねぇ…確かに違う道を歩いてたはずなのに…此処に出口はないんさ?」
「そうなのかも…」
ぐしゃぐしゃと自分の髪を荒く掻き回すラビ。
「暖炉の入口の所に戻る?其処が出入口になってるのかもしれないし」
入口も出口も一つなら納得はいく。
散々歩き回って足は棒と化していたけど、そんな弱音吐いていられない。
「…ごめん。私の不注意で」
私が暖炉に顔を突っ込んでいなければ、こんなことにはならなかったかもしれない。
申し訳さなが募り頭を下げれば、髪を掻き回していたラビの手が止まった。
「別に南は悪いことしてねぇだろ。仕事してただけだし」
「そうだけど…」
「それに此処を見つけたお陰で、そいつ見つけられたんだし」
そう言ってラビが指差したのは、私が抱いているファインダーのマント。
「骨は持っていけねぇけど、外に出たら供養してやるさ。少しは救われるかもしんねぇし」
ラビの手が優しくマントに触れる。
その目は少しだけ哀しそうに微笑んでいた。
…こういうところ、ラビは優しい。
エクソシストとして、ブックマンJr.として。
色んな死を学んできたからか、命を大事に思う心を知っている気がする。
「じゃあ早く外に出ないとね」
「ああ。でもその前に一旦休憩」
「え?」
休憩なんてしてる暇ないのに。
慌てて否定しようとすれば、徐に屈み込んだラビが私の足元をゴーレムの光で照らした。
「通路、狭かったからな。足、擦り傷だらけだろ」
ズボンだから外目から見て、そんなことわかる訳ないのに。
狭い通路を通る度に岩場に擦れて、確かにズボンの下の皮膚は擦り切っていた。
エクソシストだからなのか、ラビだからなのか…この観察眼、凄いなぁ。
「別にそんなの…それより早くアレン達と合流しないと」
「オレも一度、頭ん中の地図整理したいし。急がば回れって言うだろ?」
トン、と己の頭を指差して、見上げたラビがヘラリと笑う。
「最初の場所まで結構距離あるし。一旦、体力回復させて。んで、行こう」
その笑顔は教団内でも見せる変わらないもので、思わず体の力が抜ける。
「…わかった」
そして気が付けば自然と頷いていた。