第20章 骸
「なんか変な臭いがするな」
「そうなんだよね」
ザクザクと細い通路を進みながら、スンと鼻を鳴らすラビに賛同する。
「きな臭いというか、なんというか───」
そう言いながら、少し開けた場所に辿り着いた時。
「っ!?」
むわっと、急にその臭いが強くなった。
「臭っなんさこれ」
思わず口と鼻を押さえる。
ヘアバンドを擦り下ろして、口元を隠しながらラビも眉を潜めた。
「酷ぇ臭いさ」
ざっと辺りを見渡す。
光も何もない部屋は暗く、何かが辺りを埋め付くしているのがなんとなくだけどわかった。
「生ゴミ捨て場とかじゃねぇ?」
「それなら、誰かが住んでるってこと?」
こんな薄気味悪い、地下迷路の中に?
「「………」」
こんな所に住んでいるなんて、一体何者なのか。
お互いに想像して顔を見合せて、
「…ないな、うん」
「そうだね。ないない」
即否定。
どんなに考えても嫌な予感しかしないから、止めておこう。
「でも本当、ナマモノっぽい臭い」
辺りに散らばったゴミに目を凝らす。
なんだろう。
こう、何かが腐ったような臭いというか…。
微弱なゴーレムの光を近付けてゴミ屑を物色する。
布切れや鞄のような物、色々なゴミの下に固い瓦礫を見つけた。
一つ手に取って光に照らす。
光に照らされ見えた白っぽいそれは───
「………これ、骨?」
何かの動物の骨のようだった。
「げぇ。此処にあるの全部、骨かよ」
嫌そうに辺りを見渡すラビ。
確かに、よくよく見ればどれも白い瓦礫の山。
どうやらこれ全部、動物の骨のようだ。