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科学班の恋【D.Gray-man】

第82章 誰が為に鐘は鳴る



「大体なんでこんな袋鼠状態になってん───」

『ギャシャァアア!』

「うひゃあ!?」

「わ…ッ」



扉越しに威嚇してくる猛獣のような声に、小さな体は震え上がり唐突に南へとしがみ付いた。
ガタガタと震えながら身を縮ませる様は、見た目通りの幼い子供のようにしか見えない。
理性を取り戻してもとてもじゃないが戦力になるようには見えないラビの姿に、やはり選択を間違ったかなと南は僅かに肩を落とした。

───が、



「怖ぇ…ッ」

「………」



震える小さな体から伝わる温もり。
子供の体特有の、ほんのりと高い体温。



「ラビ」

「な、なんさ」



呼べば当たり前に返ってくる声。
それが例え怖気付き弱々しいものでも、確かな"人"としての反応だった。

そしてそれは確かに求めた人物のもので。

傍にいる"ラビ"という存在を、もっとしっかりと確かめたくなった。



「南?」

「………」



小さな体へと伸ばした二つの腕が、呆気なくその体を抱きしめる。
血の臭いも混じってはいるが、彼が持つ本来の匂いが鼻先に微かに香る。
視界に映るは、太陽のように明るく鮮やかなオレンジ色の髪。

確かに彼は、此処にいる。

浸るように目を瞑り、南は目の前の存在を実感した。



「な、ん…南…っ?」



急な南の行動に焦りを覚えたのはラビの方だった。
焦りと言うより、衝撃の方が大きい。
ラビのように恐怖で抱き付いているようには見えない。
感情を込めた抱擁に、自然と顔が熱くなる。

そんなラビのぎこちなく吃る声や強張る四肢の緊張一つ一つも、なんだか彼らしさを感じて。
南は尚のこと浸るようにラビを抱く腕に力を込めた。



「…ラビ」

「な、なん、さ」

「……傍にいて。離れるの禁止」

「…は…?」



ぽそりと儚い声で、それでも迷いなく告げられたのは、普段の南が口にしないような言葉。
その不可解さに一瞬思考を止めたかと思えば、ぷしゅうっとラビの頭から湯気が昇った。



(な、ん…っなん、さ、なんさコレ…!急なご褒美タイムきたんだけど!これラッキールート!?バイオハザードって恋愛ゲームだったっけ…!?)



テンパる頭は花畑。

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