第19章 名前の無い感情
「…ずりぃさ」
ぽつり
薄暗い静寂に響いたのは、小さな声。
"…ごめん"
それは、あの夜聞いた声と同じだった。
少しだけ泣きそうな、そんな声。
「オレのもんになってくれねぇのに、オレのことは失いたくないって。そう言うんさ?」
恐る恐る顔を上げる。
視界に映ったのは…微弱な光に映る、哀しそうに笑うラビの顔だった。
「それって…」
「あーあ。言うつもりなんてなかったのに。南が突っ込むから」
ガシガシと頭を掻いて溜息を零す。
それからヘラリと、よく見せる砕けた笑みをどこか哀しそうに浮かべて。
「───オレ、南が好きだ」
そう、彼ははっきりと告げた。