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科学班の恋【D.Gray-man】

第82章 誰が為に鐘は鳴る



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「本当なんで…夢?…じゃないし。痛い」



こつり、こつり。
なるべく足音を立てないように慎重に進む南の足。
一歩踏み出すごとに、敏感な黒い獣耳が前方後方へと向きを変える。
その耳の先を摘んで引っ張ってみれば、地味に痛みが走る。
夢だと錯覚したくなるが、どうやらそれは儚い望みとなって散った。

一寸先は闇。
人の気配のない真っ暗な広い教団の廊下は、普段見慣れたはずのものなのに全く別の世界に見えた。
まるでホラーゲームか何かをプレイヤーとして実体験しているようだ。
今にもすぐそこの通路からゾンビが飛び出してきそうで、身が震える。



「大体、噛まれたらアウトじゃなかったの…なんで私だけコンティニューになってるの…」



ゾンビに噛まれれば同じゾンビと化す。
それは婦長や元帥達を見て理解していた。
となればエクソシストも一般人も関係なく、誰しも結果は同じはず。

なのに何故、南だけ無事なのか。

助かったことは嬉しいが、一人だけ助かっても素直に喜べない。
寧ろハードモードでのホラーゲームプレイだ。
戦闘能力のない女性が武器無しで無防備に歩いていれば、秒殺ゲームオーバーなのは目に見えていた。



(ラビ達も…無事なのかな…)



最後に覚えているのは、ブックマンに襲われていたラビと元帥達に襲われていたアレン達。
最後までアレンを抱きしめ泣いていたジョニーは無事だろうか。
満足に走れない体なのだ、無事なら助けに行かないと。

独りぼっちの寂しい心が仲間を求めた結果なのか。
気付けば南の足は、再び食堂へと向かっていた。

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