• テキストサイズ

科学班の恋【D.Gray-man】

第81章 そして誰もいなくなった



「く…そ…ッ」

「…室…長…」



ミシミシと大きく咎っていく牙。
肌から浮き上がる血管。
明らかなゾンビ化現象が起きているコムイの体に、力なく凭れかかる亡霊の細い体。



「おまえ"の…さっきの言葉…うれじがった…」



同じくウイルスに犯されてゆくのは、体はリナリーの生身のものだからだろうか。
力なく呟く声は儚くも、感情に満ち溢れていた。

忘れ去られなどしない。
そうしかと伝えてくれたコムイに、安心しきった子供のような顔で目を瞑り身を預ける。
そうして意識を沈めゆく亡霊の隣で、コムイもまた意識を深い闇の中へと落としていった。



「ガァァアア…」

「グルルル…」



ずるずると衣服や足を引き摺り、教団内を彷徨う亡者。
そこに正気を保った者は一人としておらず、広い教団内に響くは呻き声だけ。

閉めきった密室の中。
淀めく気配と呻き声。

生存者は一人残らず消され───










そして誰もいなくなった。









/ 1387ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp