第81章 そして誰もいなくなった
───
──────
─────────
暗く冷たい教団内部。
蔓延る者は理性を失った亡者のみ。
獲物を失くし、彷徨うように食堂から一人、また一人と姿を消してゆく。
やがて人気のなくなった食堂の、ソカロが破壊し作り上げた巨大なクレーターの床の上。
「───…ぅ…」
其処で微かに動く、生身の体が一つ。
力の入らない指先を震わせて、覚束無い動作で罅割れた床に手をつく。
「っは…」
よろりと体を傾けながらも、なんとか上体を起こし顔を上げる。
顔に浮かぶ太い血管などはない。
口元にも鋭く主張する牙などない。
焦点の合った目を瞬かせ、頭に生えた二つの獣耳を揺らす。
「……ぇ…………あれ?」
それはクラウドに襲われたはずの、被害者である科学班の一人。
「……私………生きてる?」
椎名南の姿だった。