• テキストサイズ

科学班の恋【D.Gray-man】

第81章 そして誰もいなくなった



✣ ✣ ✣ ✣



ずるずる、ずるずる。
布を引き摺る音が響く。



「ヒッヒッひっヒッ」



濁った嗤い声と共に。



「着いだ」

「イテッ!」

「…此処…食堂、か…?」



か弱い少女の腕だけで、大の大人三人を引き摺り続けたリナリー。
否、リナリーの体を乗っ取った使徒適性実験の亡霊。

乱暴に放り出され、縄に縛られた姿で頭を打ったリーバーは、辺りを見てすぐにそこがどこか理解した。
停電したままの教団内は暗い内装に合わせて薄暗く視界も悪いが、長年住み込みで働いてきた職場。
場所の把握くらいなら訳はない。



「ヒヒひヒ」

「うわーん!リナリーの姿で下品な笑い方をするなぁあ!!」

「ごれで皆ずっど一緒だ」



ロブの隣で滝のように涙を流しながら叫ぶコムイは、亡霊に乗っ取られたリナリーしか見ていない。



「リナリーを返せぇええっ!!」

「そっそれより室長!周りを見て下さい!」

「それよりじゃないよリーバーくん!僕には一番許せないことだから!譲れないから!リナリィイイイ!!!」

「は、班長…っあれって…!」



これではコムイは使い物にならない。
リーバーと同じく辺りを見渡したロブが、サァッと顔を青くする。
薄暗く広い食堂内。
元帥かエクソシストか、力のある者が暴れたのか破壊跡の形跡が残る箇所が幾つも。
そして割れた床の上を、徘徊するゾンビのように歩いているのは教団の団員達。



「お前ら…っ」

「ジョニー!アレン!ラビ!神田まで…っ」



その中で、元帥達に襲われた際に離れ離れとなったエクソシスト達をリーバーとロブは見つけてしまった。



「皆…感染しちまったのかよ…」



絶望に声が萎む。

リーバーの予想が正しければ、もうこの場で無事なのは科学班の三人。
リーバーとロブ、そして号泣するコムイしかいないことになる。



「…南?」



そこではっと、彼女の姿が見当たらないことにリーバーは気付いた。



「南は何処に───」

「班長!あそこ見て下さい!」

「!」



縄で縛られて両腕を動かせないロブが、視線で一点を示す。
目で追ったリーバーは、壊れた机や椅子の間に倒れこんでいる白衣姿を見つけた。



「南…ッ!」

/ 1387ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp