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科学班の恋【D.Gray-man】

第81章 そして誰もいなくなった



「もう失いたくないんだ…目の前で仲間を…皆を…ッ」



ひくりひくりと、ジョニーの口から零れ落ちる小さな嗚咽。



(ジョニー…)



朦朧とする意識の中、南はアレンを抱きしめ泣き続けるジョニーの姿を捉えた。

泣いている。
仲間が。
大切な友が。

傍に寄って、大丈夫だと。
消えたりしないと伝えたいのに、それができない。



(駄目だ、意識が…)



体を縮ませて泣き続けるジョニーに、わらわらと無情にも群がるゾンビ化人間達。
魔の手は唯一無事であったジョニーにも伸びる。

薄暗くなっていく視界の中、南は歯を食い縛り悔しさに顔を歪めた。

破壊された倉庫内で別れ際、リーバーに無事でいてと願っていながら、自分が情けない結果となってしまった。
弱々しく見えたリーバーの姿を彼の部屋で目の前にした時、自分は死なないとあんなに強く宣言したのに。



(リーバー班長…)



彼は無事だろうか。
闇へと視界と意識が取り込まれる中、無事を願うのは彼のこと。



(ラビ…)



手を伸ばしても届かなかった。
ブックマンや他のゾンビ化人間に群がられ、姿の見えなくなってしまったラビ。
悲しみ馳せるのは彼のこと。

こんなに呆気無い最後になってしまうなんて。
直接的な死ではないが、教団の者が全員ウイルスに感染し全滅すれば、文字通りの終わりとなってしまう。



「…っ…」



ドクンドクンと、不快な鼓動が脈を打つ。
奥底から侵食されていく、抗えない不快感を味わいながら、南は力なくその場に崩れ落ちた。










そして、ふつりと意識は途絶えた。









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