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科学班の恋【D.Gray-man】

第81章 そして誰もいなくなった



コムイとリナリーには、やはり切っても切れない絆がある。
血が繋がっているからこその絆ではない。
紛うことなき"家族"であるからこその絆。
その絆を垣間見て、リーバーもまたほっと肩の荷が下りたように眉尻を下げた。

薄々感じていた上司のぎこちない妹への態度。
それが嘘のように消えている空気に、よかったと安堵して。



「…っ」

「っ!?な…!おい!?」



しかし謎の少女は違った。
腐敗した唇を噛み締めて、恨めしそうに歯を軋ませる。
途端に、まるで古い井戸から這いずり出てきた貞○かなにかのように、四つん這いで這いずりながらリーバーの腹部からずるりと抜け落ちた。
目にも止まらない速さでコムイの横を通り過ぎ、リナリーの目の前で止まると腐った両手で小柄な顔を鷲掴む。



「じあわせ…?」



間近にリナリーの顔を覗き込み、腹の底から低い声で問い掛けた。



「いいなぁいいなぁわだしだってなりだいなぁ」



恨み妬み。
ドス黒い感情を混じり合わせながら、睨むようにリナリーの目を食い入見る。



「いいなぁいいなぁいいなぁ」

「おい!?やめろ!」

「何やって…!」



その異様な光景に、リーバーとコムイが危機感を感じた時。



ドォオオンッ!!!



まるで大地震のような地鳴りが響いた。



「し、室長!これ…ッ」

「いっいかん!すっかり忘れてた…っ」



地鳴りのような巨大な響きだというのに、それは下からではなく上から降ってくる。
教団が崩壊でもしているのかと疑う程の破壊音と振動。

考えられるとすれば一つだけ。
教団を破壊できる程の力を持つ、元帥達の騒動だ。



「だれもごの城から出すもんか…」



顔を青褪めるリーバー達とは裏腹に、一人ぐぷりぐぷりと笑い上げる。
それは謎の少女ではなく、するりと縛り上げていたロープから抜け出たリナリーだった。
少女の姿は消えていてどこにも見当たらない。
しかし濁りしゃがれた声は、リナリーの口元から零れている。



「おまえ"らはゴムビタンDに侵ざれて、ずっどわだしと暮らすんだ」



恐らく少女の精神かなにかが、リナリーを乗っ取ったのだろう。
綺麗な顔を歪ませて口角をつり上げると、少女は不気味に嗤った。



「ヒヒヒひヒ」






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