第81章 そして誰もいなくなった
「なんで戻って来て…?」
「逃げるさ!」
「南さん!ジョニー!走ってッ!」
「え?」
「一体何が───」
「いいからボサッとすんな!食われるぞ!」
きょとんと首を傾げる南とジョニーに、血相を変えた三人が声を張り上げる。
何事かと目を見張る南達が目を止めたのは、こちらへと走ってくるアレン達の背後。
「え、ぁ…あれ…」
「まさか…ッ」
『イヤァアア!ゾンビガ来タァアアアア!!!!』
其処には元帥達を含めた大量のゾンビ化人間が、群を成して襲い掛かってきていたのだ。
「早く!」
「ま、待って!オレ走れな…!」
「ごめんジョニー!」
「わっ!?」
走れないジョニーを、通り過ぎ様にアレンが抱え上げる。
「南も!」
「え、ちょ、待っ…!」
「さっさと走れ!ケツぶっ叩くぞ!」
「えぇええ!ちょ、引っ張んないでぇええ!」
ラビに強く手を引かれ、前のめりになりながら南も駆け出す。
背後で、凡そ子供らしくないドスの利いた声を出して脅す神田がいれば、自然と足も速くなる。
『待ッテヨ!置イテイカナイデェエエエ!!!!』
その後を、両目からオイルを吹き出しながら追い掛けるコムリンEX。
涙の咆哮は真っ暗な通路の奥底へと響き渡り。
「グルルァアア!!!」
「ガァアアアア!!!」
襲い来るゾンビ達の罵声に呑まれて消えた。