第81章 そして誰もいなくなった
「「待ぁああてぇええぇええええ!」」
状況を理解したエクソシスト組の行動は早かった。
獲物を捉えた獣のように、雄叫びを上げながら扉の向こうへと飛び出していくアレンとラビ。
あの神田でさえもカッと目を見開き、無言の殺気を放ちながらクロウリーの後を追い掛けた。
「わ!行っちゃった…ッ」
「待って~!オレまだ走れないんだよ~!」
その場に南とジョニーを残して。
「あーあ…声聞こえてないね…あれじゃ…」
「はぁ…どうする?南」
「どうするって言ったって…アレン達と離れてる方が私達は危険だよ。後を追わなきゃ」
「だよね…」
松葉杖を手に走れないジョニーを、一人残して後を追う訳にはいかない。
溜息混じりに南は扉の外へと顔を出すと、周りを確かめつつ一歩踏み出した。
「辺りにゾンビはいなさそう。行こう、ジョニー」
「うん」
「ほら、コムリンも行くよ」
『…エ?私?』
「他に誰がいるの。其処で一人でいたければいいけど───」
『嫌!私モ行クネ!一緒ガイイ!』
扉の近くで蹲っていた、外れた己の顔を抱いた小心者機械、コムリンEX。
それにも声を掛ければ、脱兎の如く倉庫から飛び出し付いてきた。
相手は機械と言えど、南達の身代わりになってクロウリーの蹴りを受けたのだ。
此処で見放す訳にもいかない。
「とにかくアレン達が走っていった方向に…」
ドドドド…
「ん?」
「なんか騒音が…」
ドドドド…ッ
「あれって…」
「アレン達?」
『戻ッテキタミタイヨ』
ドドドド…!
長く暗い通路の闇の中へと消えていったと思われた、アレン達一行。
その後を追おうとする前に、微かな騒音が南達の耳に届いた。
段々と大きくなる音に、不安が駆り立てられる。
真っ暗な通路の向こうから、こちらへと走って来る影が三つ。
間違いない。
見覚えあるシルエットは、アレンとラビと神田の三人。