第81章 そして誰もいなくなった
『コッ…恋?コレハ恋ナノ…!?アアン胸ガ苦シイ…!』
「僕に協力してくれますか…?扉、」
『ハイ…開ケマス…愛シイヒト…♡』
「…なんさこの茶番」
「あいつの博愛の中にロボットは入ってねぇのか」
「コムリンシリーズには以前、酷い目に合わされてるからね…アレンは」
「だからアレンは本当は怖い子なんだってば…怒ると特に」
バックに薔薇が咲き乱れて輝いているかのように見える、謎のアレンとコムリンEXの愛ある(かは定かではない)やりとり。
傍観者となったラビや神田達の目は冷たい。
少しの同情も残していないのだろう。
アレンにとってコムリンEXは利用できるだけの駒。
普段から誰にでも紳士的で優しい彼とは異なる姿に、南は一人こっそり頷いていた。
真っ白な頭の綺麗な顔した少年だが、腹の奥底は実はドス黒いのかもしれない。
『開ケタラァアコラァアアア!!!!』
アレンに背を押され、勢いよく重い錠を引き剥がし扉を開くコムリンEX。
ただ開けばいいものを、扉を機械の手で易々と引き千切り破壊している。
ミサイルでアレンを気絶させる程に吹っ飛ばした腕前の持ち主だ。
霊を怖がりつつも、強いロボットなのかもしれない。
『ドッカラデモカカッテコafフ5d%!?!!』
しかしコムリンEXの勢いを跳ね返す程の衝撃で、破壊した扉の暗闇から突き出した片足がロボットの頭を蹴り飛ばした。
血のようなオイルを噴き出しながら、破壊し切り離された頭と胴体。
呆気なくその場に崩れ落ちるコムリンEX。
「え」
「げ」
「な」
「ま、まさかの」
「パターンな展開…ッ!」
瞬殺である。
「さっさと開けりゃあいいものを…」
ジャラ、と重い鎖を引き摺るような音。
唸るような低い声は暗闇の中から。
「苛々させおって…この…童共」
蒼白い、上半身裸の細長い体。
白い前髪に後ろへ流れるにつれて黒く染まっている、独特の癖毛。
背中には二つの黒い蝙蝠のような羽根を携え、顔の至る所で血管を浮かび上がらせ唸る者。
「あれって…」
「やっぱ、」
「クロウリー!?」
息ぴったりにアレンとラビとジョニーの声が重なる。
確かに扉の向こう側にいたのは、クロウリー本人だったらしい。