第81章 そして誰もいなくなった

『何スルノ！？』

「扉開けて来て下さい」

『イヤァアァアアア！酷イネ！怖イノ皆一緒ヨ！』

「ヘーキさヘーキ」

『開ケタ途端ズバン殺ラレル！ホラーノ常識ネ！』

「そんなパターンな展開ねぇよ」



目と鼻からオイルを洪水のように吹き出しながら、嫌々と首を横に振るコムリンEX。
それを笑顔で送り出すアレン達は、微塵も容赦がない。



「うわぁ…機械だからって容赦ないね皆…」

「というかあのコムリン、いつから似非中国人みたく話すようになったんだろう…あんな喋り方してたっけ…」



傍観に徹するジョニーと南もまた、止める気はないらしい。
元はと言えば、リーバー達と逸れこんな状況に陥っている原因はコムリンEXにある。
同情しろという方が無理な話なのかもしれない。



「僕らだってこんなことを君にさせるのは辛いんだよ、EX」

『嫌ヨ！開ケナイ！』

「聞いてEX」

『嫌ッ！助ケテゴ主人！』



嫌々と涙を流しながら駄々を捏ねるコムリンEXに、アレンが優しく語り掛ける。
それでも話を聞こうとしないコムリンEXを、無理矢理にでもアレンの両手が肩を掴み押しとどめた。



「いいから聞いて！コムイさん達と逸れた今、コムビタンDのワクチンを作れるのは南さんとジョニーだけなんです！」

「あ。」

「そだね、そういや」

「こちらに残った手勢は、僕と君と役に立たなそうなチンクシャだけ！」

「…わー…酷ェさ…」

「ッ」



"役に立たなそうなチンクシャ"とは、明らかにラビと神田のことだろう。
ぶちん、と神田の堪忍袋が切れる音に、咄嗟に南は小さな体を止める為に抱き込んだ。



「放せこの…ッ！」

「す、ストップ！アレンに何か考えがあるみたいだしっ落ち着いて神田ッ」



そんな煩い外野もお構いなし。



「お願いします…っ頼れるのは君だけなんです！」

『ッ…！？』



アレンの演技は未だに続いていた。
そしてその演技は、どうやら機械の心に響いたらしい。

切なげな表情でコムリンEXの肩を抱き詰め寄るアレンに、バキュン！とコムリンEXの胸から音が鳴り響く。
一体どんな構造になっているのか。