第18章 地下へ
「落としたって何処に…!」
「わっかんねぇ。落下した時の衝撃かも」
「じゃあどっか落ちてるかも…!はい探すっ!」
「い、いえっさーっ」
慌てて二人で暗い地面に齧り付いて小さな鉄槌を探す。
なのに落ちた衝撃で何処かに弾かれたのか、あの小さな鉄槌は何処にも見当たらなかった。
今回ばかりは、あの便利なサイズ変換機能を呪った。
GPS機能でも付けるべきだ、装備型イノセンスは全部。
帰ったらコムイ室長に即提案しよう。
絶対。
そう決心して探すこと数十分。
「…なんでないの」
「…わかりません」
鉄槌は物の見事に、迷子になってしまわれた。
「これじゃアレンのこと、とやかく言えないよ…っ」
アレンはまだ人としての意思がある分、自分で戻ってこれる。
でも鉄槌は無機物。
自分達で見つけない限りは見つからない。
「とりあえずアレン達と連絡取って、明かり持って来て探した方がいいさ。もしかしたら宿屋に忘れただけかもしんねぇし…」
「いやいや。イノセンスの扱い雑過ぎでしょ」
「そうさ?ユウなんて面倒だからって、伸びた髪を六幻で切ってたけど」
まじですか。
…もうちょっと丁寧に扱いましょうよ、ええ。
でも暖炉からの小さな光だけじゃ、確かに辺りは満足に見渡せない。
仕方なくラビの意見に賛同しようとして、そういえばと嫌なことを思い出した。
『ザザ──…ピー…』
「…電波障害?」
「…やっぱり」
あの屋敷内でさえ電波障害起きてたんだから、こんな地下、更に届かなくてもおかしくない。
「…もしかしてこれって、大ピンチ?」
無情に雑音を届ける通信ゴーレムの回線を切る。
連絡も取れずイノセンスも紛失した状態で、こんな得体の知れない穴の中。
思わずひやりと最悪な状況下を想像した。
「いや、まだ道はあるさ」
そんな私に、別の方角に視線を向けたラビが首を横に振る。
「よく見れば此処、通路みたいだ」
暗い場所に段々と目が慣れてくる。
すると剥き出しの岩場の壁が把握できるようになった。
その目でラビが見る先を見れば、
「何これ…」
複数の剥き出しの岩場で作られた道が、ぽっかりと暗い口を私達に向けていた。