第81章 そして誰もいなくなった
「わっ…!?」
「きゃっ!」
重い錠を掛けた扉の向こう側。
そこから響く微かなノック音に、すぐさま行動を起こしたのはエクソシストの三人だった。
一斉に扉から距離を取り離れる。
アレンに手を引かれて、ジョニーと南の体も素早く扉から引き離された。
「すみません、手荒になって」
「う、ううん」
「それより今…っ」
「ああ、ゾンビ連中のお出ましかもしんねぇさ」
「チッ、見つかったか」
コンコン、
再び響くノック音。
やはりそれは分厚い扉の向こう側から。
「でも可笑しくない?ゾンビだったらノックなんてするかな…っ」
「…確かに」
今まで出会ったゾンビ化人間達は本物のゾンビかの如く、脇目も振らず唸り声を上げて襲い掛かってきていた。
扉を律儀にノックする理性など残っているのだろうか。
南の尤もな意見にアレンが頷いた時。
『……アレン…』
その名を呼ぶ声が、扉の向こうから静かに響いた。
『…ラビ…』
アレンとラビ。
二人の名を紡ぐ声は、その場にいる全員が聞き覚えあるものだった。
『私である…』
「え。ちょ、待つさこの声って…っ」
「まさか…!」
「クロウリー!?」
そう、今し方アレンの夢の中に出てきていたであろう人物。
アレイスター・クロウリーのものだった。