第81章 そして誰もいなくなった
「あそこ」
『ポンコツノ私ハ生キル価値ナンテナイ…』
「…ああ、六人ね…」
ん、とジョニーが指差した先を目で追えば、ぐすぐすと倉庫の隅で泣くロボットが一体。
成程それを入れての六人かと、アレンもすぐさま理解し頷いた。
「大丈夫さ?南」
「う、ん…」
一頻り痛みに無言で耐えた後、どうにか抱えていた頭を離す。
赤くなってしまった南の額を見て、あちゃあ、と苦笑しながらも酷くはない怪我にラビもほっと一息ついた。
今この緊迫した状況で怪我を負うことは、軽いものでも後々響き兼ねない。
なるべくなら無駄な怪我は負いたくないところ。
「それにしても……夢、か…」
状況を理解し落ち着きを取り戻したアレンが、一人意味深な言葉を呟く。
(そういえば、)
クロウリーの名を呼びながら飛び起きたアレンは、酷く慌てた様子だった。
一体どんな夢を見ていたというのか。
「アレン、さっきクロウリーって叫んでたけど。なんの夢見たの?」
「え?あ、はい…それが……って。そういえばなんで僕半裸なんですか」
アレンの呟きを獣耳で拾った南が問いかければ、説明をする前にアレンが気に止めたのは自身の体。
何故か蝶ネクタイもベストもシャツもボタンが外れ、素肌が見え隠れしている。
「ああ、それは南がやったんさー」
「えっ。………」
「ち、違う違うっ誤解!変なことなんてしてないからッだからそんな顔しないでッ」
「ぁてッ」
ポッと頬を染めてぎこちなく視線を逸らすアレンに、慌てて南は首を横に振った。
ラビの頭をしっかりと叩くことも忘れずに。
相手は青少年。
自分は成人した身。
犯罪者側となるのは、どう見ても自分だ。
変な誤解を受けてもらっては困る。
「怪我してるかもしれないと思って、体診ようとしてただけなの。怪我はない?痛みとか」
「あ、そうなんですか…はい、大丈夫です。ありがとうございます」
「そう、なら良か───」
手早く説明すれば、そこは紳士なアレン。
すぐにいつもの笑顔を見せる彼に、本当に心配なさそうだと南がほっと息をついた時。
コンコン、
不意に真後ろの扉から、ノック音が響いた。