第81章 そして誰もいなくなった
アレイスター・クロウリー。
アレンとラビの手によって発見された、イノセンスの牙を持つ吸血鬼のような男性。
AKUMAの血を飲むことによって性格や容姿でさえも荒ぶり変貌するが、普段は紳士で大人しい性格の持ち主である。
しかし彼は方舟で対峙した双子のノア、ジャスデビとの激しい戦闘の末、今は医療病棟で深い昏睡状態に陥っている。
何故今、アレンの口から彼の名が出てくるのか。
「クロウリーの夢でも見てるの?アレ───」
ン、と名を呼び終える前に。
「ックロウリー!」
ガバッと唐突に、アレンの体が跳ね起きた。
結果、
「「───!?」」
ごちん!と目の前にあった南の額とアレンの額がこんにちは。
「~…っ!」
「ッ…ッ…!」
「うわあ…大丈夫?二人共…」
「すっげぇ痛そうな音がしたけど…何やってんさ」
「馬鹿が馬鹿なことしただけだ」
お互いに頭を抱えて無言の悲鳴。
身を震わせ悶える南とアレンに、神田だけが呆れた目を向けていた。
「痛…な、何…南、さん?」
「~っ…頭、割れる、かと…思っ…」
「え?だ、大丈夫ですか?僕…ご、ごめんなさい…っ」
しかしそこは流石痛みに慣れているエクソシストと言おうか。
すぐに復活したアレンに対し、南は涙目で頭を抱えたまま。
状況を理解できていないアレンが戸惑いつつ謝罪すれば、手頃な道具を見つけ出せなかったラビが手ぶらで歩み寄った。
「随分ぐっすりな気絶だったかと思えば、随分派手な起床さな。南に頭突き喰らわすくらいに」
「ごめんなさい!」
「るせぇでけぇ声出すなっ」
「え?此処…っ?」
「コムリンのミサイル爆破で、班長達とは逸れちゃって。オレ達六人だけで此処まで逃げてきたんだ」
ジョニーの説明に、慌てて辺りを把握するようにアレンが見渡す。
灯りのない暗い倉庫の中。
修行時代に培った、夜目が利くアレンの眼は、頭を抱える南と、伺うように南を覗くラビ、呆れ顔の神田に、肩を落とすジョニーを映し出した。
「六人?」
アレン自身を含めても五人しかいない。
後一人は誰なのか。