第81章 そして誰もいなくなった
✣ ✣ ✣ ✣
「はッ…はぁ…!此処まで来れば…!」
「追っ手はねぇな…っよし」
「つーか、結局オレらだけでアレン運ぶ羽目になったさ…疲れた…」
「役に立たなかったね、あのコムリン」
ぜぃぜぃはぁはぁと荒い息をつきながら、大人二人と子供二人、少年一人にロボット一体、それから金色のゴーレムが一匹。
そんな凸凹メンバーが逃げ込んだのは、古い倉庫の一室。
しみじみと呟くジョニーの眼鏡の奥の目は、倉庫の隅に蹲っているコムリンEXを映し出していた。
『ゴ主人守レナカッタ…私ハポンコツダ…』
なんとか一緒に逃げてきたものの、めそめそと目からオイルを零すロボットはガラクタ同然に役に立たず。
南とラビと神田の手で、気絶したままのアレンをどうにか此処まで運んだのだ。
「これだけ頑丈な錠がありゃ、すぐにはぶち破れねぇだろ」
「相手が元帥じゃなければね…」
がこん、と重く大きな鉄の錠を扉にかける。
小さな神田の手には余る錠を共に掛けながら、南は肩を落として呟いた。
リーバー達は無事逃げ遂せただろうか。
離れる際に聞こえた襲撃音は、元帥の攻撃によるものだろう。
「………」
「言っただろ」
「え?」
「教団で一番頭の良い連中が二人揃ってるんだ。そう簡単にくたばらねぇよ」
「…神田」
不安が顔に出ていたのか。
素っ気無い言い方だったが、確かな励ましに南の顔にも自然と明るさが戻る。
「そうだよね。ありがとう」
科学班室長であるコムイと科学班班長であるリーバーは、この教団内で随一と言ってもいい頭脳の持ち主だ。
特にコムイは奇抜な発想に長けている。
此処にいる面子では思いつかないような脱出法を、今頃易々と見つけているかもしれない。
「それにリナもいる。あいつのイノセンスなら、元帥相手でも簡単にやられねぇだろ」
「だといいけど…アレンはあんな状態だよ」
「……それはあいつが鈍いだけだ」
あんな、と言って南が指差したアレンは、未だに気絶して倒れ込んだまま。
余程打ち所でも悪かったのだろうか。