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科学班の恋【D.Gray-man】

第81章 そして誰もいなくなった



ガシャンッ!と無残に落下してくるコムリンEX。
それくらいの衝撃で壊れないのは、流石コムイの発明物と言えよう。



『イキナリ何スルノ!私ハゴ主人守ルネ!』

「巻き毛なら俺らでなんとかする!この失態の原因はお前だろ、アレン運ぶの手伝ってやれ!」

「そ、それならリーバー班長も…ッ」

「俺は行けない。此処で元帥を足止めしないと」

「えぇ!?む、無茶っすよ班長!」

「そーさ!アレンでも太刀打ちできねぇってのに、はんちょが敵う訳ないさ…!」

「敵う敵わないが問題じゃない」



段々と薄れていく真っ黒な煙。
周りを取り囲むゾンビ化人間の気配を感じながら、それでもリーバーは微かに笑ってみせた。



「一つでも多くの命を救えるか救えないか。それが問題だろ」

「だからって…!」

「いいから行け。元帥達がそっちに気付く前に」

「チッ…行くぞ!」



先頭を切った神田が、部屋の外へと踏み出す。

確かにリーバーの言う通り。
今の手勢で元帥達には太刀打ちできない。
となれば逃げて機会を伺い、この状況を打破できる策を練らなければ。



『ゴ主人…!私ハゴ主人守ルノヨォオオ!』

「わーったさ!だから今はアレン運ぶの手伝えって!」

「っ…南、班長の言う通りだ。今は逃げないと…ッ」

「ぅ、うん…」



煙と瓦礫の先。
囮としてとどまるリーバーを見上げて、南はきゅっと唇を噛み締めた。



(リーバー班長…っ)



どうか無事でいて、と。
言葉にせずとも伝わる思いに、薄いグレーの目が和らいだ。



「心配するな。隙を見て逃げるから」



心配掛けまいと笑ってくれる。
最後まで気遣うのは、自分のことより周りのこと。
どこまでもリーバーらしい姿に、更に強く唇を噛み締める。



「絶対ですよ…ッ」

「ああ」



念を押すように南が声を掛けたのが最後。
程なく元帥のイノセンスによって、二度目の衝撃が上階を襲ったのだった。






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