第81章 そして誰もいなくなった
「っ…ラビ、貸して。私が運ぶから」
「へ?あ、南っ」
「皆はサポートお願いッ」
ここで一番にアレンを運べるのは自分だけだと、ラビに被さっていた少年の体を南が背負う。
少年と言っても、しっかり体を鍛え筋肉を作り上げているアレンは、とても"軽い"と言えるような体重ではない。
そして南は体育会系女子でもなんでもない、寧ろ理系女子。
しかしここで泣き言なんて言ってられない。
なんとかアレンを背負い立ち上がる南を、ジョニーやラビがサポートするように支えた。
その時。
「ゴホッ…南…!ジョニー!お前ら無事か…!?」
「!」
「この声…っ」
立ち込める煙の中から、咳き込みながらも呼び掛けてくる声が届いた。
南とジョニーには親しみのある上司の声だ。
「リーバー班長…!?」
「オレら此処にいます!下の階ですっ!」
「そこか…!アレン達も一緒なんだな、大丈夫かっ?」
口元を片手で覆いながら、大きく空いた天井から覗いたのはリーバーの姿。
一見して酷い怪我を負っているようには見えない。
その姿に南の顔にも自然と笑顔が宿る。
「オレ達はなんとかっでもアレンが今の爆破で気絶しちゃって…ッ」
「そうか。待ってろ、今そっちに俺も…っ」
ざっと見る限り、下の階には怪我人であるジョニーと幼児化と気絶したエクソシスト達、そして女性である南しかいない。
即戦力になりそうな者が皆無な状態に、咄嗟にリーバーが身を乗り出した時。
「ユーくんは其処にいるのかい?」
ぞわっと背後に悪寒。
振り返らずとも、其処にゾンビ化したティエドールがいることはわかった。
「っ…くそ」
朦々とまだ煙は立ち込めている。
ティエドールの目には、下の階に落ちた神田は見えていないはず。
振り返ったリーバーは顔を顰めると、咄嗟に傍にあったガラクタに手を伸ばした。
「お前、あいつらの手助けして来いッ」
『エ?』
がんっ
『エェエエェエエ!?!!』
否、ガラクタではなくロボット。
コムリンEXを穴の下へと蹴り飛ばしたのだ。