第3章 蓮の葉
「……どうして一部屋しかない訳?」
明らかに嫌悪を孕んだ目で秋夜を見る。
「っだって、しょうがないだろ!そんなに手持ちもなかったんだから…」
尻窄まりな言い訳を言い始める彼を更に睨んでから深くため息を吐いた。
「…はぁ、まぁいいけど。それから俺はこれから偽名使う予定だから、うっかりすんなよ」
「…素性隠すのか?どんな名前?」
「浅谷玻瑠(あさや はる)にしようと思う…」
「…はるねぇ、漢字は水晶の玻に玉の瑠?」
「…正解」
漢字まで一発で当てられたことがなんとなく悔しくて顔を逸らす。
「…ま、別にいいんじゃない?悪くないと思うよ」
秋夜が笑っているのがわかって振り返ろうとするとまたしてもぐしゃぐしゃに頭を撫でられた。
「…」
このときは何も言うことができなかった。
「さて、女?」
「…んー、いや、男にしようかな」
「りょーかい、浅谷玻瑠性別は男ね。よろしくな、玻瑠」
流石に頭領の息子は出来が良い。覚えが良くて有難い。
「そういえば、秋夜はどうするんだ?これから」
私に協力する気なら何処かで情報収集することになる。
「そうだなぁ、俺は俺なりに動いてみるよ」
そう言って彼は笑った。