Let's play our music!【うた☆プリ】
第13章 求めたもの
教室を飛び出した私がやって来たのはレッスン室。
さっき華と話したところではなく、今でも使われている部屋だ。
この時間は幸い使われていなかったのでいさせてもらうことにした。
今は誰にも会いたくなかった。
「……」
壁際に座り込み、膝を抱える。
頭の中で違うことを考えていないと、先ほどのことがぐるぐるしそうで。
急に動かなくなった指。
体からなくなった体温。
やけに鮮明に聞こえる嘲りの声。
対照的に全く聞こえない励ましの声。
全てが私を震わせる。
初めて、音楽を怖いと思った。
今まで1度もなかったことだ。
ううん、音楽だけじゃない。
私は他にも怯えていた。
音楽、周囲の人。
それらは、愛しいものだったはずなのに。
何も出来ないかもしれない自分。
それは、少しずつ好きになり始めたものだったのに。
今は、こんなにもそれらが恐ろしくて。
「…っ、誰!?」
物音1つに飛び上がりそうなまでに驚いてしまった。
それが扉が開いた音だと気付いたのは振り向いたときに彼がいたから。
「……こんなところにいたのだな」
「聖川、さん…?」
聖川さんが何故ここに。
驚いて言葉を発せない私の想いを察したのか、彼は頼まれてなと言った。
「春歌に?」
「いや、伊集院にだ。一応俺もあいつとは面識がある」
「……華に…?」
確かに聖川さんも神宮寺さんと同じく財閥の御曹司。
華と知り合いでもおかしくない。
でも今までそんな様子を見たことがなかった私にそれは思いつかなかった。
「お前のことをやたらと気にしていてな。丁度自習時間だった俺に連絡してきたのだ……落ち込んでいないかと」
彼女という人は…。
あんな別れ方をして気まずかっただろうに、教室を飛び出した私を心配してくれたのだ。
ほんのり心が温かくなる。
気付けば隣に座っていた聖川さんは、私のことを真っ直ぐに見つめていた。