Let's play our music!【うた☆プリ】
第13章 求めたもの
そう…華の言う通りだ。
自分を偽る人間が何を伝えられるというのだろう。
でももし何も伝えられないなら、私は今まで何を表現してきたのだ。
翔と曲を作った時に不意にやってきたメロディーは、何も伝えていないのか。
「私は…」
「、どうした?」
「っ、すみません」
日向先生の声で我に帰る。
いまが授業中だということをすっかり忘れていた。
そうだ、私は先生に指名されてピアノを弾くように言われたんだった。
早く弾いて座席に戻ってそれから考えよう。
そう思って鍵盤に指を置いた。
課題曲である楽譜を見て、その通りに指を動かす。
でも、何かが変だった。
音は一音も間違えていないのに、言いようのない不安が私を襲う。
大丈夫?
本当にこれで私は良いの?これで弾けているの?
本当に?
「……っ、あ…」
本当は今までのものは全部大したことなくて、先生方がちょっと高めに採点してくれただけじゃないのか。
麗奈が知らないところで手を回して私の成績を底上げしているのではないか。
本当の私は、ここに入学することさえ出来ない人間じゃないのか。
「?」
「どうしたの、あの子」
「さぁ…遂に化けの皮が剥がれたんじゃない?」
「ちょ、やめなさいよ」
クラスの声が耳に入る。
化けの皮…そうなのかもしれない。
私自身も知らない間に、素晴らしい毛皮を着ていたのかもしれない。
なら…それらすべてをはがされたら、
私には何が残るんだろう。
指が止まった。
石のように硬く、重くなって自分の意志では動かせない。
なのに勝手に小刻みに震えていて、背筋を嫌な汗が流れるのがよく分かった。
「…あ…あ…」
「?!どうした、しっかりしろ!」
日向先生の声が遠い。
クラスメイトの声も遠い。
味方の声は……しない。
「っ、!どこに行く!」
突然天涯孤独になったような気がした。