• テキストサイズ

Let's play our music!【うた☆プリ】

第11章 パーティーにて



伊集院家のホームパーティーが始まる。

本当だったら私もあの中に混ざって美味しいご飯を食べていたはずなのに。


「……お腹痛い」

「ちょ、緊張しすぎ!」


私はパーティーが行われている大広間の横の部屋でうずくまっていた。
出番はもうすぐ、逃げることは許されない。


「仮にも元アイドルがそんなんで良いの?」

「ダンスは専門外…」


人前に出ることが苦手なわけじゃない。
でも、苦手なことを人前で披露することは避けたい。


そんな私に彼女はため息を1つ。
いい加減腹をくくれと叱咤激励してどこかへ消えた。



「……逃げたい」



途端に恐怖も緊張も倍増した。
誰も知り合いのいない空間に飛び込まなければならない事実に足が震える。

嫌だ、怖い。

足が自然とドアへと向いた。


「レディ、調子はどう?」

「神宮寺さん…」


それを止めるかのように、タイミング良く彼が部屋へと入ってくる。

「もうすぐだろう?本番は」

「…まぁね、でも…」

「不安かい?」

不安…。
そうか、私、不安なんだ。

「いくらリハーサルしても、華と打ち合わせても。この震えが止まらない」

逃げてしまいたい。
私を知る人がいる場所へ、優しくしてくれる場所へ。


「誰も知らないところに放り込まれることが、怖い」


味方のいないところで、苦手なことを披露する。
そんなこと、出来るわけがない。





「心外だな、」


あの時以来初めて呼ばれた名前に、反射で反応する。
目が合った彼は子供をあやすかのように私の頭を左右に撫で、やがてその手を滑らせて頬に触れた。


「俺がいるじゃないか」


言い聞かせる彼の手に自分の手を重ね、その温もりを確かめた。
あったかい、それは彼がここにいる証。


「神宮寺さんが、いる…」


1人じゃない。


「共に踊る、パートナーだっているじゃないか」


華がいる。


「最初の拍手は俺がするよ……いっておいで」



扉が開き、大広間で挨拶を済ませたのであろう華が私を呼んだ。

神宮寺さんに背中を押され、1歩、また1歩足を進める。


その心は不思議と落ち着いていた。




「、真ん中は君の場所だ」
/ 200ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp