Let's play our music!【うた☆プリ】
第10章 彼のための曲
そして。
「おはよ、翔!出来たよ曲!!」
「お、マジか、やったな!!」
一ノ瀬さんと話したその夜、自分に自信を少し取り戻した私はメロディーが次から次へと溢れてきて、曲作りに没頭した。
おかげで寝坊して、華に起こされなければ遅刻もあり得た。
熟睡していた私を起こすのは相当に骨が折れたようで、朝からげっそりした華に、貸し1だからと怒られてしまった。
それでも、教室に駆け込み翔に楽譜を見せれば、彼は歯を見せて笑う。
「俺も歌詞考えてきたぜ!」
得意げに見せてくれる翔を見ていたら、昨日あれだけ頑張って良かったと思えるのだ。
そして歌い込み、曲は完成した。
提出した時、余程私と翔は得意げだったのだろう。
日向先生に"お前ら自信ありそうだな、楽しみにしているぜ"と言われて、照れたように笑いあった。
そんな風に時間は流れて。
「、この間の課題結果出てる!!」
「本当?!」
そう華に聞くや否や、翔と2人で教室を飛び出す。
元気だねぇと笑う神宮寺さんの横を通り過ぎ、かすかに微笑んでくれた一ノ瀬さんに笑いかえし、結果の掲示場所へと急いだ。
「、あった!」
すでに人だかりの出来ていた掲示板。
その人の間をすり抜け、最前列へとやって来た私達は息を整え、覚悟を決めて掲示を見た。
「……あっ…」
私と翔の名は、上位5名の中に入っていた。
「やったな、!!」
翔の声が、華の声が遠くに感じる。
世界が私と結果の書かれた紙だけになったかのように、他の何にも注意を引かれなかった。
私は……。
「レディ?」
「っ!!」
「どうしたのそんなに驚いて…おめでとう、これが君の力だよ」
そんな私を現実に引き戻したのは神宮寺さんだった。
彼の言葉に現実味が増し、目頭が熱くなる。
皆のおめでとうの言葉が嬉しくて、やりきった自分を初めて褒めてやりたかった。
そうやって自分のことに精一杯だった私は気付かなかった。
私の名前の上に表示されていた、"七海春歌"の文字に…。